今の時期は二十四節気で言う処の【処暑(しょしょ)】のあたり。
七十二侯では、【天地始粛(てんちはじめてさむし)】と呼ばれる頃合いに含まれるのだと言います。
【天地始粛】の意味は
「天地の暑さが漸くおさまり始める頃」
ちなみに、【粛】は縮む、しずまると言う意味を併せ持っているのだそうです。
今年の夏も、これから少しずつ縮み沈み行く時節を迎え始めるのかと思うと、
些か詫びしい気持ちにもさせられます。
だけどその又一方で、
【天地始粛】を終えた頃に名付けられた七十二侯の名称には、
【禾乃登(こくものすなわちみのる)】という呼び名が付けられてもいるんです。
そしてこの三文字の言葉の内側には
「いよいよ稲が実り、穂を垂らす頃」という意味が込められています。
だからふと、こんな思いを瞼の裏で馳せてみました。
時には縮み、時には詰まり行く朝と夜を重ねただろう彼方の人も、
悄然(しょうぜん)さと揺らぎの季節を共に分け合った隣の人も、
やがては実りを迎え黄金(こがね)を宿し、
実るほど頭を垂れる稲穂の様に、
燦然として凜然と、
地を照るその陽を掴むように攫うように。
背を張らせて腕をしならせ、
やがて向かい伸び上がる【いつか】の日を、
その身へ迎え入れる事が出来ますように。